電子線照射お役立ち情報

電子線照射サービスのご紹介

投稿日:2023年02月28日最終更新日:2023年03月17日

当社では、主として電子線照射装置を製造・販売する一方、電子線照射サービスの事業も行っております。本記事では電子線照射サービスのご依頼の流れと照射事例をご紹介致します。

電子線照射サービスとは

電子線加工にご興味があっても、設備導入となると中々難しいです。電子線加工を身近にご利用いただくため当社保有の電子線照射装置にて照射実験や受託加工を実施させていただく有償サービスです。

当社保有の電子線照射装置

照射サービスは当社EBセンターで実施しており、京都、前橋および九州の3拠点にございます。京都に4台、前橋および九州に1台ずつの計6台を保有しております。それぞれの設備の概要を表1に示します。
フィルムなどの薄物サンプルは加速電圧の低い京都の設備、シートなどの厚物のサンプルは前橋の設備、というように、サンプルの厚み(比重1換算)やサイズ、照射方法等によって使用する設備が異なります。

表1.当社保有設備
保有設備

照射方法

上記で、当社が保有する実験装置とそれらの仕様についてご説明致しました。
ここでは、実際に照射実験をする際、どのような方法で試験することができるのかの一例を示します。

(1)枚葉(バッチ)試験
初めての照射実験で電子線照射の効果の有無を確認する際や、連続試験や生産に向け、細かな条件出しをする際などに適しています。
下記にバッチ試験に適した装置の概要を示します。

(1)-1 EBC-300
図1にEBC-300の装置概略図を示します。加速電圧仕様は150-300kVで400μm程度の厚み(比重1換算)の処理が可能です。サンプルを載せる照射トレー寸法は60cm×60cm×3cmHでA4サイズが5枚程度セットできます。このトレーに乗せることができ、同条件であれば、一度に処理することが可能です。照射トレーは図1の左端から装置に入り、中央の照射部を通過し右端から回収されます。その間約1分です。照射雰囲気は窒素中のみとなります。一度の照射で最大200kGy程度の線量を与える事が可能で、トレーを往復させることで線量を積算することが可能です。

EBC-300, 装置概略図

図1.EBC-300 装置概略図

 

(1)-2 EPS-750
図2にEPS-750の装置概略図を示します。加速電圧仕様は300kV-750kVで、1500μm程度の厚み(比重1換算)の処理が可能です。
サンプルを載せる照射トレーのサイズは120cm×80cm×7cmHになります。照射雰囲気は大気中ですが、専用トレー(115cm×39cm×4cmH)を用いることで窒素雰囲気での照射も可能です。フィルム状の物だけでなく、粉体や液体樹脂、電線をとぐろ巻にした状態でのバッチ試験等様々な用途に適用可能です。バッチコンベヤの高さを調整することで、ヒーター等も設置できますので加熱しながらの照射も対応可能です。遮蔽のため装置はコンクリートで覆われた構造をしています。1バッチの処理時間は、シールド扉の開閉および加速電圧の昇降圧時間を含み約10分程度です。

EPS-750, 装置概略図
図2.EPS-750 装置概略図

 

(1)-3 EPS-3000
EPS-3000の加速電圧仕様は1000kV-3000kVで当社が保有する実験設備で最も大きな設備になります。1cm程度の厚み(比重1換算)の処理が可能で枚葉試験、連続試験のいずれにも対応可能です。バッチ試験の場合、EPS-750と同様の方式で遮蔽室内にバッチコンベヤを設置し、サンプルを載せたトレーが照射部を通過することで照射されます。照射トレーのサイズは180cm×90cm×15cmHで大気中での照射になります。当社保有の加熱容器を用いることでサンプルを加熱しながらの照射が可能で、フッ素樹脂の照射実験などに使用することが可能です。

(2)連続試験
フィルムやシート、電線やチューブ等の線状のサンプルなどの照射が可能です。バッチ試験で条件出しが終わった後、生産を見越した長尺品の照射実験や、少量サンプルでは評価できない材料を試験する際などに利用されます。

(2)-1 EBC-200
図2にEBC-200の装置概略図を示します。加速電圧仕様は150kV-200kVで200μmまでの薄物フィルムの連続照射に適しており、幅は最大1000mmまで対応可能です。遮蔽体の外に巻出し機と巻取り機を有しており、連続した処理が可能です。照射雰囲気は窒素中で搬送速度は最大50m/minです。(※照射線量によって異なります)

EBC-200, 装置概略図

図3.EBC-200 装置概略図

 

(2)-2 EPS-800
図4にEPS-800の装置概略図を示します。加速電圧仕様は400kV-800kVで、2mm程度の厚み(比重1換算)の処理が可能です。EPS-750同様バッチコンベヤを用いた処理も可能ですが、図に示すような搬送機を使用することで電線やチューブ等の線状サンプルの連続処理が可能です。図4に示すように照射部の下で線状サンプルをターンさせることで、線量の積算が可能なので、幅広のフィルムやシートなどのサンプルと比較すると一度の照射で多くの線量を与えることができます。

EPS-800, 概略図
図4.EPS-800 装置概略図

 

(2)-3 EPS-3000
EPS-3000は枚葉試験だけでなく、連続試験の対応も可能です。加速電圧が高いのでEBC-200と比較すると厚物のフィルムやシートの照射に使用されます。最大照射幅は1800mmで大気雰囲気での照射になります。

照射サービスご依頼の流れ

ここまで、当社が保有する実験設備や照射の方法などをご説明してきましたが、ここでは実際に照射サービスをご利用いただく際の流れをご説明致します。

(1)実験のご相談およびご提案
ホームページまたはお電話にて承っております。
電子線加工の条件は加速電圧(kV)と線量(kGy)の2つとなります。(詳細につきましては、こちらを参照ください。)
加速電圧は透過能力を決めるパラメーターであり、加速電圧が高いほど、透過能力が高くなります。(厚いものが照射できます)
実験を行う際は、材料の厚みや比重、必要な処理厚み等をお伺いし、実験に適した加速電圧の提案および装置を選定致します。
吸収線量についは、サンプルに入射する電子の数を表し、材料に与える影響の度合いを意味します。材料の特性や当社試験実績に基づく知見などからご提案させていただきます。

(2)お見積り書のご提出
サイズや数量、処理条件および希望納期等をお伺いし、お見積り書を発行致します。

(3)照射実験のご依頼
サンプルの送付方法、納期、お立会いの有無などをご相談すると共に照射日程を決定致します。

(4)電子線照射
電子線照射を行い、ご指定の場所に納品いたします。

さいごに

本記事では、当社が保有する実験設備の概略仕様、またそれらを使用した照射実験の方法等についてご紹介致しました。今回記載した照射例はほんの一例で、搬送系や照射方法を工夫することで様々な実験が可能です。実験用途に応じて適切な実験方法をご提案致しますので、まずはお気軽にご相談ください。

(藤田記)


[本件に関するお問い合わせ]
株式会社NHVコーポレーション EB加工部
TEL:075-864-8815
こちらのフォームよりお問い合わせください。

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